こちらは、2024春M3新譜『Bar Bijou Étoile』のライナーノーツページです。
各曲のネタバレを含みますのでご注意ください!
アルバム全体の紹介記事はこちら↓
それでは以下、ライナーノーツ(空華オキside)をお楽しみください!
【Ishikawaさんsideはこちらから】
【アートワークご担当の千さんによるジャケット&ロゴ等の解説記事はこちら】
Tr.1 Bijou Étoile
1曲目の「Bijou Étoile」は、nil-Glassとしては初のフル尺のインスト曲になります。
(ワンコーラスのものは『Reincarnation of Starry-Chant』に収録された「Eclipse Revenge」の原曲がありましたが)
この曲に関してはコンセプト出し以外はほぼほぼ私は見守りポジションだったのですが、夜のひととき、あるいは開店準備中のバービーズ(マスターとイーサラーザ)の一幕を感じさせるようなジャジーな雰囲気で、Ishikawaさんのオシャレ側面大暴れ!みたいな楽曲になっています。
あれっ、これ拍子いくつ…?おや、、、また変わった?????(もしかしてやはりボーカル曲では手加減されてたのかしら…)
Ishikawaさんのギターとベース演奏が軽快かつとても心地よく、雰囲気といい、また、来てほしいところに絶妙に音が来る感じもあって、個人的にもとても好きな楽曲です。拍子はわからなくなりますが(笑)
ちなみに、今作のイーサラーザは完全にスターシステムでの登場なので(イーサラーザは同じく千さんがアートワークをご担当くださった『Reincarnation of Starry-Chant』に登場するもふもふ謎生物です)、作品の本筋には基本かかわってはこず、お客さんに「おつまみちょうだい?」したり撫でてもらったりぐでぐでしたりしているだけなのですが(妄想)、この曲だけ最初と最後にひょこっと顔を出しています。
どんな風に顔を出しているかは…、ぜひ『Reincarnation of Starry-Chant』や同時頒布の「歌う!イーサラーザキーホルダー」収録の「イーサラーザ」という楽曲と聞き比べてご確認いただけましたら!
ちなみにこの曲の曲名にもなっている「Bijou Étoile」は、宝石の星、小さく輝く星、というような意味合いです。
この星がなにかは…アルバムを聞いてくださったみなさんの心の中に。
千さんが作ってくださったアルバムロゴが本当にイメージぴったりなので、ぜひぜひそちらもじっくり見て頂けたらうれしいです!
Tr.2 Drops of Turning point
2曲目の「Drops of Turning point」は、作詞の久遠真雪さんにゲストとしてご参加いただいた楽曲です!
このアルバムは悩みを抱えた人の前に現れるバーがコンセプトということで、軽快なジャズサウンドに乗せたお店紹介&お客様のお出迎えがテーマになります。
お店紹介…ということで、なんと真雪さんにはこの曲でお店の設定を語りつくしてもらう&お悩みオムニバスもしてもらうという曲芸ともいえる内容を歌詞中でこなしていただきました…!
しかもnil-Glassからの「あんまりお悩み相談室みたいにしないでほしい」「できるだけ生々しくしないでほしい」というようなニュアンスのリクエスト付き…!この人たちは悪魔か…???
そんな情報量と制約にもかかわらず、雰囲気たっぷりに「不思議なバー」を描き出してくださった真雪さんの光る手腕には本当に唸るばかりです(大変お世話になりました…)。
楽曲のほうは軽快なテンポに乗せた…乗せ…シャッフルリズム細かくない?!となりながら、真雪さんの描いてくださった世界観を大切に、ジャズ的なゆらぎも加えながらできるだけ明るく朗らかにお客さんをお迎えできるように意識しながら歌わせていただきました。
歌詞を見ていただくと分かるのですが、基本的にこのバーは「話を聞くだけ」で「決めるのはあなた」というスタンスをとっています(イーサラーザはもふもふしてるだけだし、マスターもそんなに深入りしない)。
ただちょっぴり不思議な力がエッセンスとして加わることで、グラス一杯のお酒を通して、お客さんが見たいものや、心の底にしまっていた本当の気持ちに気づく…という…。
なので、あまり湿度感が高くなりすぎないよう、それでいて突き放しすぎないよう(「決めるのはあなた」は本当に難しかったです)、適切な距離感で寄り添えたらいいな、ということを考えながら歌っていました!
ところで、歌詞の「夢に会う」がこのバーの存在そのものの表現にピッタリすぎて私はふるえています…(やはり真雪さんはすごい…)
あと、大変だったところといえば「いらっしゃいませ」が地味に難関ポイントでした!
いいニュアンスになるまでひたすら「いらっしゃいませ」だけを繰り返すオキさん…その様はまるで飲食店の研修のようだったとか…(笑)
ちなみに曲名の「Drops of Turning point」は、真雪さんからいただいたタイトル案を組み合わせて命名させていただきました。
今回のアルバムは、1曲目以外はお酒やバーにちなんだタイトルで統一しているのですが、こちらの2曲目は、「Turning point」がお酒の名前(ウィスキーの一種)とお客さんにとっての分岐点、というダブルミーニングになっています。
ところで…ブックレットの仕掛け、オシャレじゃないですか???(こちらは千さん発案です!雰囲気たっぷり!!!)
Tr.3 non parfait amour feat. 鈴木デコ
3曲目の「non parfait amour」は大人の魅力たっぷりのツインジャズ曲です。
バーをテーマにアルバムを制作するにあたり、今回のコラボ枠としてツインボーカルのジャズ曲を1曲入れたいね、とnil-Glass内で話していたのですが、ジャズ…ジャズ…難易度が高いぞ…というところでお誘いするボーカルさんを悩んでいたところ、既に戦闘曲コンピの制作でご一緒していた鈴木デコさんからご快諾をいただき、デコさんならもうどんな曲でも大丈夫!(絶対の信頼感)ということで爆誕したのがこの楽曲になります。
戦闘曲コンピの「悪夢の受胎、絶望の産声」の方はエピック的(シネマティック?)な雰囲気の強い曲で、デコさんにはブルガリアンボイスでの歌唱をお願いしていたのですが、こちらの「non parfait amour」ではジャジーで、まるでお酒の雫が滴っていくかのような、アダルティなお声が大変魅力的です。
デコさんにご参加いただくことが決定してから、お洒落でジャジーな雰囲気に合うのは…ということで、前作『Garden of Nature Piece』でもご参加いただいた悠貴さんに作詞をお願いしました。
アートワーク担当の千さんに事前に楽曲デモを聞いていただいたときに、どんなイメージですかね?とお伺いしたところ(千さんは企画立案から深く関わってくださっていたので、今回はたびたび千さんのアイデアを取り入れさせていただいていました)、「百合ください!!!!!!!」という元気なお答えが返ってきたので、即採用の上、悠貴さんには「友愛や恋慕など濃度はおまかせします」「悩みが根本的な解決に至らなくても、ちょっと前向きな考え方ができるようになればOKです」などというような形でご依頼させていただいたのですが…。
想像以上の素敵な歌詞をいただいて、nil-Glassはもはや「いい…」しか言えないモノと化していました(いいサラーザか?)
ご本人は難産だったとおっしゃっていましたが、いただいた歌詞は芳醇で耽美さもあって、それでいて揺れる想いが上品に描かれていて――ぜひブックレットでじっくりご堪能いただければと思います。一緒にくらくらしましょう。
ちなみにわれわれnil-Glassは、「お互いのグラスはもうとっくに空っぽで」のところで最高潮を迎えていました(nil-Glassはだいたい「空のグラス」くらいの意味です)。
ちなみに私はデコさんに想いを寄せる女性のパートを、デコさんは想いを寄せられていることはわかっているけれど…という女性をそれぞれ担当しています。
(みんなデコさんに惚れちゃうよね…!!!)
余談ですが、途中まではデコさんと私のパンの位置が逆だったのですが、千さんのイラストを見たIshikawaさんが左右を入れ替えました。やっぱりここは一緒じゃなきゃね…!
そう、デコさんに惚れちゃうよね…というのは本当にそうで…今回はデコさんに収録を先行していただいたのですが、もうお歌が良すぎて良すぎて。
最初にいただいた音源を聞かせていただいた時に、もはや衝撃すぎて唖然としたというか…確認用に手に持っていた譜面はバサバサ落ちるし…いやこれで未調整とかどういうこと?????ってなっていました。
あまりに良すぎてデコさんに「お歌が良すぎてキレそうになったのは初めてですよ」なんて○リーザ様みたいなメッセージを送ったりしていました(笑)
いや…あの時は本当にどうしようかと思いましたね…私がちゃんとツインの役割を果たせるのか超不安でした…www
普段複数人以上で歌う時は、だいたい他の方の歌声を想像したり聞きながらバランスをとる感じで、あえてちょっと表現に違いをつけるなどの調整をすることが多いのですが、もうそんな余裕などないという…😂
また、今回の楽曲の構成的に、2人でユニゾンになったりハモリながらシームレスにメロディラインを受け渡したりしていたので、これは表現をできるだけ近づけたほうが合うだろう…という意図もあり、できるだけデコさんに近づけるように頑張…なかなか道のりは遠かったです(笑)
ちなみに今回は、せっかくデコさんとご一緒するなら…ということで、楽曲の最後にフリースキャットゾーンを設けよう、ということで、デコさんに自由にスキャットを入れてください!とお願いしました!
した…のですが、、、あれ…なんだか私のパートも……あるな?(おかしいぞ…???)
ということで、本式のスキャットに初挑戦させていただきました…!大苦戦でした!!!笑
デコさんのスキャットがまた溜息が出ちゃうくらい最高なのですよ…どうやったら違和感なく合わせられるだろう~~~~とめちゃくちゃ頑張りました(積みあがるテイクの山)。
あと、この曲はバイオリンも弾かせていただいたのですが、「ジャズでバイオリン…?」とこちらも表現を大変試行錯誤することになりました。
最終的に個人的なコンセプトが「ブラスみたいなバイオリン」で落ち着いたのですが、果たして…。
などと大変カロリーの高い楽曲となった「non parfait amour」ですが、最終的にはとてもいい塩梅に仕上がったのでは?とnil-Glass内でも大評判です。
やはり人は高い壁を乗り越えることによって進歩していくのだ…(?)
なお、タイトルの「non parfait amour」は悠貴さんの命名で、「blue moon」というカクテルに使われている「完全なる愛」という意味のリキュール、パルフェタムールからとってくださったとのことです(nonちゃんが情緒を刺激する…)。
Tr.4 mermaid champagne
4曲目の「mermaid champagne」は水の中を揺蕩うような雰囲気のある、ミディアムテンポのチル曲です。
本作の中で唯一の詞先曲で、作詞は私が担当しました。
過去5作でもなんやかんやで作詞はさせていただいていたのですが、ずっと曲先だったので、今回が初めての詞先での作詞の経験になりました。
音符による縛りがないので自由にのびのび作詞できるかと思いきや、これがまたなかなか大変で…メロディフレーズの補助線がない状態で、歌う時の音もちゃんと意識した詩を書くのは曲先とはまた別の難しさがあるなあと思っていました(やっぱり作詞家のみなさんはすごい…)。
作詞のテーマは…あまり言うとアレなのですが、千さんとnil-Glassの作戦会議でどんな「お悩み」がいいか考えた時に出てきたもののうち、一番重ためのものが反映されています。
(オキさんほっとくとすぐテーマが重たくなる?そうかもしれない…)
かといってチルの曲調にすることは決まっていたので、あんまり影の色を濃くしすぎるのもな…と思い、インスピレーションをもらいたくて、作詞中は、2022年に開催されていたミロ展(ジョアン・ミロ)の図録をよく見ていました。
私が作詞にかなり時間がかかることはこれまでの展開からわかっていたので、Ishikawaさんにはできた部分から順次歌詞をお渡ししていました。
初期段階でいただいたラフでは少しイメージより明るいかも?と思っていたのですが、最終的な編曲ではイメージぴったりに仕上げていただいたなあという気持ちでいっぱいです。
特にイントロは、個人的にはこれ以外はないかなあと思ったりしています。
曲が後からくるとこういう驚きというか、ドキドキ感があって面白いですね…!
ちなみに、間奏のモノローグパートは、作詞段階からおおむね歌にしないことを想定して書いていました(なお、歌う人のオキさんは作詞する人のオキさんに「なぜモノローグにした?!」と後で憤慨していた模様…笑)
収録に関しては、ひとまず歌として歌う分はそこまで苦戦しなかったのですが、上述のテーマとチルの曲調とテンポ感と歌詞の雰囲気の中のいいバランスをとりたい…というあたりで色々と試したりしていました。
その中で、バイオリンパートについても、Ishikawaさんに調整をお願いしまして…、元々一番にも弾くパートがあったのですが、最初は静かに始めたいということでバッサリカットして今の形になりました。
タイトルの「mermaid champagne」は、そのまま、歌詞とシャンパンからとっています。
千さんのブックレットデザインやXFD演出の色合いがとても素敵なので、ぜひそちらもあわせてお楽しみいただけたら嬉しいです…!
Tr.5 Bitters in love
5曲目の「Bitters in love」は、夜の街を思わせるような、ちょっと都会的で軽快なR&B楽曲です。
作詞もIshikawaさんが担当しています。
そう、軽快なR&B楽曲なんです。
この曲も、1曲目の「Bijou Étoile」に次いでIshikawaさんらしさが大爆発していて、「R&Bで軽快…?どうしたら…???(しかも細かいシャッフルリズムでぴょんぴょん跳ねてるし…)」というのが正直な第一印象でした(笑)
R&Bってどういうのだったっけ…???などとやや悩んだのですが、もうこれはnil-Glass流R&Bでいいか…と途中から開き直ることにしました。
ジャンル警察の方すみません…大目にみてください…😂
というわけで、収録にあたってはリズムをしっかり出すことを意識しつつ、一方でジャンル特性的にあまり前ノリになりすぎないようにということも気にかけながら歌ったりしていました。
(いま振り返ってみると、フレーズの意図に対抗してメロウに歌ってみる手もないでもなかったかなとは思いますが…笑)
そんなわけでシャッフルリズムにはそこそこ苦戦はさせられましたが、キャッチーなサビメロは歌っていて楽しく、時々自然に口ずさんでしまうくらいに好きです。
歌詞で描かれているのは、夢を追う「あなた」についていくか、自分の道を行くかを悩んでいる女性なのですが、またこの描き方がニクいくらい洒落ていて、どうやったらこんな歌詞が書けるのだろう…といつもながらに思っていました。
個人的には、2番の歌詞全般がとても大好物です。
個々の言葉選びももちろんですが、銀色のシェークを視覚的に想起させてからの「二つの願いは どれだけ混ぜても混ざり合わない」に至る流れは展開があまりに上手すぎる…。
そしてダメ押しのように出てくる「1 oz」とか「1 drop(ひとしずく)」…一体何を食べたらそんなにお洒落な歌詞が書けるのか教えていただきたい…(笑)
タイトルや歌詞についてはきっとIshikawaさんサイドでより細かな解説があると思いますが、タイトルは「ビターズ」というリキュール名とかけているそうです。
ところでこの女性、午前3:00にメッセージを送ってしまうなんて…どちらの道を選んでも強く生きていけそうな気がしますね…?(しかもビターズの度数、相当高いぞ…?笑)
Tr.6 Golden dawn
アルバムの最後を飾る楽曲は、真雪さんに作詞いただいた「Golden dawn」です。
この曲は、穏やかながら前向きな気配のあるボサノバ曲で、正式タイトルが決まるまで関係者(nil-Glass+真雪さん)の間では「前向きな気分で帰る曲」と呼ばれていました🐈
真雪さんにこういう締めの楽曲の作詞をお願いしたら天下一品…!ということを過去作で知って味を占めていたnil-Glassは、コンセプトが確定して制作が始動したかなり初期の初期に、この楽曲の真雪さんへの打診を決めていたのでした(笑)
ボーカルとバイオリンの収録自体も、メインの箇所は確かこの曲が一番早かったように思います。
この「Golden dawn」もまた、歌詞が大変素敵なんですよね…。
音数が比較的に少な目な楽曲でありつつ、またアルバムの最後の楽曲ということもあって特定のお客さんに限定しない広い余地を残した歌詞でありながら、個々の悩みや気づきの手触りにもそっと触れるような言葉たち…真雪さんの紡がれる詞の懐の広さと寄り添うような眼差しには、いつもいつもハッとさせられます。
Ishikawaさんの楽曲も、どこか夢との境にいるようなやさしげな気配に満ちていて…このアルバムのラストを飾るのにぴったりの楽曲だな…と思っています。
果たして、不思議なバーは本当にそこにあったのか…。
ちなみに、この「Golden dawn」では、真雪さんへnil-Glassから「朝帰りしたいです!」という謎リクエストをして歌詞を一部ご変更いただいたのですが、その結果生まれた「起き立ての光が」というフレーズが非常に素晴らしくて…ぜひ、このラスサビの流れを受けたまま、千さん渾身のジャケット最終ページを味わっていただきたいなと思います。
なお、「Golden dawn」という曲タイトルは私がつけさせていただいたのですが、このフレーズの印象と、「期待と不安」というカクテル言葉を持つ同名のカクテルから採らせていただきました。
誰にとっても、不思議なバーから出た時に見る夜明けが、輝かしいものでありますように――。
◆
改めて振り返ってみると、ゲストのみなさまのお力を借りながら作った楽曲たちは、どの曲もキラキラと輝く、自分にとってまさしく『Bar Bijou Étoile』というタイトルにふさわしい大切な宝物だな…と感じています。
この先、そんな宝物たちを聴きながら飲むお酒は、きっと一段と味わい深くなることでしょう。
そして、もし、このCDをお手に取ってくださる方がどれか一曲でも気に入ってくださるようなことがあれば…どんな美酒にも勝る喜びになるに違いありません。
それぞれのご縁に深く感謝しつつ、今回はこのあたりで筆を置かせていただきます。
――ようこそ、『Bar Bijou Étoile』へ!